blogエントリ「余暇の使い方」(2005/02/02)で書いたとおり、柳田邦男の
「キャッシュカードが危ない」を読んだり、その後色々ニュースをチェック
したりしてるうちに、すごいTV放送があったみたいですね。残念ながら
見ることはできなかったのですが…
(1) ICキャッシュカードがスキミングできる
嘘です。
すでに色々な方が言及されていますが、ICキャッシュカード内の
データは暗号化されていますし、その暗号を解くための鍵は厳重
に管理されています。さらに、ICキャッシュカード自身が確かに正
当なものであることを証明するための仕組みが取引の中に組み込
まれており、カードのなりすましができないようになっています。
※ITプロの皆様へ
全銀協ICキャッシュカード標準仕様は全銀協へ申請をすると
入手できます。また全銀協ICキャッシュカード標準仕様は
EMV 4.0を包含する形で定義されています。EMV仕様は公開
されています。
(2) 自分の磁気ストライプキャッシュカードに他人の口座番号を
上書きして自分の暗証番号を入力すると他人の預金が引き出せる
嘘です。
当時の大蔵省の指導で20年ほど前に入力された暗証番号の
照合先はキャッシュカードの磁気ストライプ上に記録された暗証
番号ではなく、金融機関のセンターに記録された暗証番号に
なっています。ですから、他人の暗証番号を知っていないと
無理です。
(3) ATMの回線盗聴をすれば暗証番号を盗むことができる
嘘です。
磁気ストライプカード前提での処理ですが、暗証番号はATMと
金融機関センターとの間で暗号化されているため、回線上を
流れるのは暗号化された暗証番号です。これをみても暗証番号
を盗むことはできません。ちなみにICキャッシュカードを前提と
した場合は、取引の都度、暗号化された経路(カード−センタ)
上で、1回限りの暗号鍵を生成・交換して、取引が実行されるた
め、解読は非常に困難になります。
(4) 犯罪組織にスクランブル解除プログラムが出回っている
嘘とは言い切れませんが、限りなく眉唾です。
スクランブル解除プログラムというのは要するに(3)で述べた
暗証番号の暗号化を解除するプログラムのことです。(これも
磁気ストライプカード前提での処理です)
銀行の基幹系システムの開発にITベンダ(主契約者)として
携わったことがありますが、この暗号化処理の部分については、
非開示でした。「誰が、どの範囲で管理しており、どんな方式で
どんなサイクルで暗号化方法を変更し、運用している」等の
情報は一切わかりませんでした。
おそらく、相当に限定された範囲の人々(情報漏洩元が確実に
トレースできる範囲)しか、この暗号化処理の開発・運用に
携わっていないのです。漏れたらどこから流出したか、すぐに
わかるはずで、万が一漏れたとしても、漏洩元を特定したうえで
すぐに暗号化方法を変更する運用になっているはずですから、
継続的に漏れるということは考えにくいのです。
銀行が今のところ補償に熱心でないとか、利用者や顧客にリスクを
転嫁しようとしている、といった部分は真実ではあるのですが、
それはそれとして、こういった技術や運用の部分でちゃんとやって
いるところについてもマスコミには正しい情報を伝えて欲しい
ものですが……期待するだけ無駄なのでしょうか。