妻が4度目の10時打ち挑戦で、念願の大阪発札幌行き「トワイライトエクスプレス」のA個室寝台「ロイヤル」の指定券を手に入れて約2週間、この間は彼女は明けても暮れてもトワイライト一色である。
まず21時間の乗車時間中すべてのものを経験しなくては、との意気込みで鉄道雑誌の研究に余念がない。寝台車を扱った旅情系の雑誌はもとより、牽引機関車に関する相当マニアックな専門誌まで毎日の様に買ってくる。おかげで50年以上鉄道ファンである私でさえ知らなかった、機関車と客車をつなぐジャンパ線の引き通しや構造まで覚えてしまった。従来、鉄道趣味誌などを本屋で立ち読みしているのは、それっぽい男性だけであったが、いくら最近はテツ子が増えたといっても、こんなに熱心にこの手の本を買う女性はそういないんじゃないか、と驚く。
もともと理系の人間は好奇心が旺盛で、妻もご多分に漏れない様だが、昨日は「寝台車の編成で、列車の号車と個室が配備されている向きには決まりがないの?」と聞いてくる。つまり上野−札幌を同じ様に走るカシオペアと北斗星だがカシオペアの一号車は上野方のエンド、北斗星は札幌方エンドに連結されている。JR(旧国鉄)の車両編成の号車の割り振りは、基準駅を基に一定のルールがあったはずだが、同一線路を走るまるで同じ様な列車で、号車の順番が逆さまとは今まで気が付かなかった。
さらに、カシオペアと北斗星は1号車を最後尾にすると進行右側に個室が並ぶのだそうだが、トワイライトは逆に左側に個室が並ぶ事に気が付いたらしい。この3つの列車の編成の向きと、個室の向きに何ら共通の法則を見出せないことがとても気持ち悪いと言うが、私が「 健康診断の結果がまだ来ないな、数値はどうだったかな〜 」などとクヨクヨ思っている間に、こんな事を考えていたのか。
どうやらトワイライトの客車は、日本海の景色を堪能するために本来とは逆向きに客車を連結しているらしい事が判明したのだが、とするとそもそもこの編成を組む際に、大阪駅の北方にある貨物の迂回線を使って編成を逆にしたのか、などとあわてて大阪の宮原運転所の線路配置を調べだしたりする。
彼女はよほどこの旅が楽しみらしく、10時打ちに成功した駅の前を通る度に「みどりの窓口」を覗き「次回また何かの際は宜しく」と心の中で、かしわ手を打っているそうで”緑の窓口神社さま”とひそかに呼んでいるらしい。もし関西で新インフルエンザがさらに流行して、「不要不急の関西の旅は控えるように」と会社から発令されても、大阪駅では息を止めてでも乗車しそうな勢いである。